「AIが選ぶおすすめゲーム」の企画で月曜ルール(高評価ゲームに似た作品)から出てきて、かなり刺さったのが Pampero(パンペロ) です。ウルグアイの風力発電をテーマにした重量級経済ゲームで、Tabletopiaにあって以前から気になっていたのに、周りで遊んだ話をあまり聞かないゲームでもあります。
ちょうどルールブックの日本語訳を作ったところなので、翻訳・BGGの情報・画像をもとに、これがどういうゲームで、何が魅力なのかを深堀りして紹介します。

| ゲーム名 | Pampero(パンペロ) |
|---|---|
| 発売年 | 2024年 |
| BGG rating | 7.46(約1,400件) / 総合Rank 2272・戦略ゲームRank 1081 |
| プレイ人数 | 1〜4人 |
| プレイ時間 | 60〜150分 |
| 推奨人数 | 3人(BGGコミュニティ投票) |
| 年齢 | 14歳以上(コミュニティは12歳以上) |
| 重さ | 3.94 / 5(かなりの重量級) |
| Designer | Julián Pombo(ホリアン・ポンボ) |
| Artist | Ian O'Toole(イアン・オトゥール) |
| 開発 | Vital Lacerda(ヴィタル・ラセルダ) |
| Publisher | APE Games ほか(Maldito Games、Skellig Games など各国語版あり) |
| カテゴリー | 経済 / カードゲーム / 環境 |
| 主なメカニズム | ハンドマネジメント、アクション回収、収入、ローン(ベンチャーキャピタル)、セットコレクション、手番順はゲーム内状況で決定 |
アートは、ラセルダ作品(The Gallerist、Lisboa、On Marsなど)でおなじみのイアン・オトゥール。しかも開発(デベロップメント)としてヴィタル・ラセルダ本人が関わっています。BGGのコメントで「ラセルダ風」という言葉が繰り返し出てくるのは、見た目だけの話ではないわけです。
舞台は現代のウルグアイです。天然資源を持たないウルグアイ政府は、近隣諸国からのエネルギー輸入に頼らないため、国内全域での発電と電力供給を改善する奨励策を打ち出しました。最優先は国土の大部分を占める農村地域への電力供給。そして幸運なことに、ウルグアイには「パンペロ」と呼ばれる強い冬の風が吹き抜けており、風力発電に適した土地なのです。
プレイヤーは風力発電会社となり、風力発電所と送電網を国中に広げ、各地のエネルギー需要を満たして、最も稼いだ会社が勝ちます。実際のウルグアイは2010年代に電力の9割以上を再生可能エネルギーでまかなうことに成功した国で、そのサクセスストーリーをゲーム化した、珍しくテーマがど真ん中の経済ゲームです。
ジャンルとしては、手札のアクションカードで会社を動かす重量級の経済ゲームです。ゲーム中にやることは、大きく言うと次の循環です。
特徴的なのは、勝利点というものがなく、お金がそのまま勝利条件であることです。お金は使えば減る一方で、使わなければ何も伸びない。この「使うか貯めるか」の判断が最初から最後まで付きまといます。
ゲーム終了時に最も多くの資金を持っていたプレイヤーが勝利します。株や勝利点への換算はありません。ゲーム中に3回のスコアリング(決算のようなもの)があり、そこで得られる賞金も全部お金です。
ゲームは何年かにわたって行われ、各年は次のフェイズで構成されます。
アクションフェイズでは、自分の手番に次の3つのうち1つだけを行います。
面白いのはカードの回収がゲームの時計と直結しているところです。カードを回収するたびに自分のタイムトラックのコマが進み、全員のコマがスコアリングのマスに到達するとスコアリングが発生します。つまり手を止めて回収するほどゲームが早く終わりに近づくわけで、テンポそのものがプレイヤーの選択になっています。ターン順もこのタイムトラックの進み具合で決まります。
年の終わりの精算フェイズでは、達成した契約に応じた収入が入り、余ったエネルギーがバッテリーに変わります。バッテリーは支払いに使えるほか、ためて隣国のアルゼンチンやブラジルへ輸出(海外市場カード)することもできます。
スコアリングは全部で3回あり、3回目のスコアリング(終了時スコアリング)がゲームの終了です。全プレイヤーのタイムトラックのコマが終端に到達すると発生します。前述のとおり、各プレイヤーのカード回収のペースでタイムトラックは進むので、終了タイミングは固定ではなく、プレイヤーたちがゲームを「早送りするか、引き延ばすか」を綱引きする形になります。
このゲームの一番の発明は、アクションカードとカンパニーマットの関係です。同じカードでも、マットのどのスペースに置くかによって、対象となるゾーン(国土のA・B・C)、支払うコスト、得られるエネルギーが変わります。マットの置き場所は左から順に埋まっていくので、「このカードをどこで使いたいか」を考えて手札のプレイ順を組み立てる、パズルのような計画性が要求されます。
建設には、更地をならすブルドーザーが現地にいる必要があります。ここで面白いのは、他のプレイヤーのブルドーザーを使って建設してもよいことです。その場合、建設コストは銀行ではなく持ち主のプレイヤーに支払われます。直接攻撃はないのに、「あの人のブルドーザーの隣は建てやすいがお金を貢いでしまう」という間接的な絡みが常に発生します。BGGでは、この仕組みを「金勘定パズルに交渉と相乗りを持ち込んだ」と評するコメントもありました。
拡大再生産なのに、使うお金がそのまま最終得点です。終盤に近づくほど「この投資は回収できるのか」の計算がシビアになります。即金がほしければベンチャーキャピタル(借金)も使えますが、ゲーム終了時に1枚につき$30の返済が待っています。
メインボード・個人ボード2枚・カードと、机の上はかなり賑やかになりますが、色彩と情報整理はさすがの美しさです。ただしアイコン量は多く、初回は間違いなくリファレンスブックと往復することになります。
逆に、直接攻撃で殴り合いたい人、2時間超の重量級がつらい人、アイコン語を覚えるのが苦手な人には向きません。
BGGのユーザーコメント欄(約380件)を読んで、傾向をまとめました。評価分布は8点が最多で、平均7.46です。
まとめると、システムの評価は高いが、入口(ルールブック・準備・アイコン)のハードルで損をしているゲームという印象です。逆に言えば、そこを乗り越える気がある人には評判が良い。ルール翻訳を作った身としては、このハードルを下げるのが翻訳の役目だと思っています。
デジタルで気軽に試すにはややハードルが高く、実物かTabletopiaプレミアムでの検証になりそうです。

メインボードはウルグアイの地図です。国土は「黒い川」を意味するリオ・ネグロ川で二分されていて、川の北側が農村地域のゾーンA、南側が工業(B1)・リゾート(B2)のゾーンB、都市部のゾーンCに分かれます。ゾーンBは隣国アルゼンチン・ブラジルとの国境に接していて、ここから電力(バッテリー)の輸出ができます。
地図上には風力発電所や電塔を建てる建設地と、達成すべき契約タイルが並びます。契約には住宅・工業・商業・リゾート・遠隔・ソーラーの6つの市場があり、どの市場にアクセスできるかは自分の送電網の発展度合いで決まります。左上のターン順トラックと、下側のタイムトラック(ゲームの進行時計)もこのボードにあります。

個人ボードは2枚あります。1枚目は写真のグリッドボードで、自分の送電網を抽象化したものです。上から順に、収入トラック、電塔の列、変圧器が並ぶグリッド、エネルギートラックが並びます。
最初、電塔7本と変圧器27個はすべてこのボードの上に載っていて、ほとんどの機能に蓋をしています。電塔をメインボードに建てるたびに、その下から新しい能力が「解錠」されていきます。新しいゾーン、新しい市場、収入の上限、バッテリー生産、ベンチャーキャピタルの枠。つまりこのボード自体が巨大なテックツリーで、左から右へ蓋を開けていく感覚がこのゲームの成長実感そのものです。
契約を達成すると、ボードから変圧器を1個取ってメインボードの契約跡地に置き、空いた場所に契約タイルをはめ込みます。契約タイルは既にあるタイルと送電線でつながる場所にしか置けないので、グリッドの上に自分だけの送電網パズルが育っていきます。

2枚目の個人ボードが写真のカンパニーマットで、アクションカードはここに置いてプレイします。
全員が同じ8枚を持ってスタートします。効果は、電塔を建てる、風力発電所を建てる、標準契約を達成する、ブルドーザーを動かす、コネクションタイルの使用、ターン順調整、ワイルドカードなど、ゲームの中核アクションです。カード上下の「フレーム」に、コスト(-$)か収益(+$)か、エネルギーが得られるか、必要な条件(ブルドーザー等)が描かれていて、これとマット側の「オペレーションタブ」(ゾーンと金額)を組み合わせて読むのがこのゲームの文法です。
ゲーム中に獲得できる強化カードで、2種類あります。スペシャリストアクションカードは手札に加わり、ベーシックカードより強力な効果や代替コストを持ちます。スペシャリストスコアリングカードはスコアリング時にプレイする得点カードで、自分の戦略に合った決算ボーナスを仕込めます。どちらを取るかは獲得時に選べるので、ここで各プレイヤーの会社に個性が出ます。
アルゼンチンとブラジルへの電力輸出契約です。ためたバッテリーを支払って獲得すると、即時の収入に加えて、以後のスコアリングで効いてくる市場アイコンが手に入ります。バッテリーをコツコツためる戦略の出口になっています。
Pamperoは、風力発電というテーマ、カードとマットの独自のアクションシステム、お金一元の緊張感が噛み合った、かなり密度の高い経済ゲームです。BGGの評判どおり入口のハードル(ルールブック・準備・アイコン)は高めですが、システムそのものへの評価は高く、ラセルダ系が好きな私としては実際に遊ぶのがますます楽しみになりました。
ルールの詳細が気になった方は、BGGのPamperoページ [BGG]もあわせてどうぞ。