書評「2050年のメディア / 下山 進」(2020/02/15)

2050年のメディア / 下山 進

インターネット登場後のメディア(読売、日経、ヤフー)の3社の軌跡を調査したノンフィクション。

冒頭2008年に新聞の販売店の担当者が、小学校で新聞の切り抜きを使った授業が「自宅で新聞を取っている人がほとんどいない」という理由でできない事に衝撃を受け、世の中の動きが変わってきているエピソートから始まります。

当時はインターネットがもう当たり前にはなっていたところにiphoneが発売された頃です。まだスマホはそこまで普及はしていなかったものの、確実にスマホ時代の到来を予感された年でもありました。この年にはリーマンショックも起こり、激動の時代ともいえるでしょう。

ここに登場する3社のうち2社は新聞中心の会社です。今、新聞はおろかTVももうオワコンと言われています。1830でいえば、パソコンは4列車、新聞は2列車。これらは時代に対応していかないと会社が潰れてしまう。そういう危機感の中、会社がどう対応しているかについて書かれている作品です。

ヤフーは本家アメリカではベライゾンに買収され既に使命を終えていますが、日本では孫氏の手腕もあり、大成功をおさめます。しかしそのヤフーにも大企業病が・・・。ヤフーと新聞各社は、ヤフーに各社の記事を掲載させることで共存を図っていきますが、ヤフーのあまりのPV数の多さによる搾取とそれに抗えない新聞各社の戦いが時系列に描かれています。

新聞社はヤフーへの掲載を止め、独自路線に舵を切ってみるものの、全く数字が取れず。ヤフー依存を止めることができません。一方、ヤフー自身もこのままのビジネスモデルに胡坐をかいていては早晩立ち行かなくなると考える若手社員は声を上げますが、おいしいビジネスモデルを確立している幹部は現状を変えようとはしません。これに業を煮やした社員がプレゼンで幹部を批判。このプレゼンを受けてとった行動は。。。

また、新聞各社はどんどん減り続ける紙媒体からデジタルへの移行を検討するも、今の盤石なビジネスモデルを捨てることができません。ヤフーがやめられないのと同じく、新聞社はデジタルに移行することによるカニバリを恐れるんですよね。

しかし、ニューヨークタイムズと日経は見事にデジタル化に成功します。特にニューヨークタイムズが変革するシーンはとても興味深く読みました。日本に一番欠けているところだと思います。

この本のタイトル「2050年のメディア」は最終章に、これからどう立ち向かっていけば良いかが描かれています。詳しくは本を手に取っていただきたいですが、インターネット時代のメディアの変遷は非常に興味深いテーマなので、関連書籍を読んでみたい気にさせられました。特に日経新聞って内情が良くわからないですよね。この本でも紹介されていますが、高杉良の日経新聞をモデルにした「乱気流」あたりから探っていきたいなと思います。

【この本から得た教訓】
ニューヨークタイムズの改革から見る日米の差

【この本を読んで読んでみたくなった本】
乱気流 / 高杉良

 




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