以前から気になっていたゲームに、Winsome Gamesの 1830 Cardgame があります。
名前の通り、名作18xx 1830: Railways & Robber Barons を連想させる鉄道経済ゲームです。ただし、これは線路タイルを敷いて路線を作るゲームではありません。BGGの概要では、Lokomotive Werks や Union vs. Central のデザイナーによる、シンプルながら厳しい鉄道経済ゲームとして紹介されています。目的はシンプルで、ゲーム終了時に最も多くの現金を持っていることです。
毎ターンやることも一見かなり簡単です。公開された3枚のカードから1枚を取り、手札から1枚を出して、株を買う、列車を買う、駅を建てる、配当を払う、のどれかを行います。
ただし、実際にはかなり変わったゲームです。列車を買ってもお金はかかりません。駅を建ててもお金はかかりません。お金が必要なのは株を買うときだけです。しかも会社には社長も会社資金もなく、誰かが株を持っている会社なら、どのプレイヤーでもその会社に列車や駅を置けます。
つまりこれは「会社を運営するゲーム」というより、共有の鉄道会社に相乗りしながら、配当タイミングと税金で現金順位を動かすゲームです。
コンポーネントはかなりミニマルです。
プレイヤーカードは4種類で、それぞれ12枚ずつあります。
鉄道会社は8社あります。各会社の株数と駅上限は、会社ごとに2から9まで増えていきます。株数の合計は 2+3+4+5+6+7+8+9=44 で、鉄道株カード44枚と一致します。
| 会社 | 株数 | 駅上限 |
|---|---|---|
| NYNH | 2 | 2 |
| B&M | 3 | 3 |
| CP | 4 | 4 |
| Erie | 5 | 5 |
| B&O | 6 | 6 |
| C&O | 7 | 7 |
| NYC | 8 | 8 |
| PRR | 9 | 9 |
ボードの中心には会社表があります。ここには、会社ごとの株数、駅スペース、フェーズごとの株購入価格、配当単価がまとまっています。
会社には駅と列車が置かれます。駅は収益を生む候補で、列車はその駅をいくつ運行できるかを決めます。
右側には未購入の列車カードが並びます。列車は 2, 3, 4, 5, 6, 8 の順に購入されます。中央ボードと会社エリアの間には、各会社に割り当てられた購入済み列車を置きます。
列車時代は、次の列車が「場に見えた時」ではなく、実際にその列車が購入された時に進むと考えるのが自然です。通常の18xxと同じく、古い列車は新しい列車の購入で錆び、会社から取り除かれます。
上部または別ボードには、配当が何回行われたかを示すトラックがあります。12回目の配当が行われるとゲーム終了です。
各プレイヤーは $60 を持って始めます。
最初に、配当以外の3種類のプレイヤーカードを2枚ずつ、合計6枚受け取ります。
そこから3枚を選んで初期手札にします。
山札には、最初から配当カードが3枚入っています。残り9枚の配当カードは、山札が再構築されるタイミングで3枚ずつ追加されます。
その後、スタートプレイヤーを競りで決めます。0ドル入札も可能です。スタートプレイヤーは最初に手番を行いますが、初期無料株の選択は最後になります。
初期無料株は、各プレイヤーが1枚ずつ取ります。ただし、CPとErieはYellowフェーズでは購入不能で、Greenフェーズ以降に登場します。
ここで重要なのが、カードを出しても効果を実行しなくてよい、というルールです。これは nullアクション と呼べます。
たとえば、株を買いたくないが手札からBuy Shareを出さなければならない、今配当すると自分が20%税を払うのでPay Dividendsを使いたくない、という場面では、カードだけを出して何もしないことができます。
特に配当カードをnullにした場合、配当は発生せず、配当回数も進みません。そのカードは配当済み置き場には行かず、通常の使用済みカードとして山札循環に戻ります。
自分の現金を払って、会社の株を1枚買います。このゲームでプレイヤーがお金を払う主な行動は株購入だけです。
株価はフェーズによって上がります。YellowフェーズではNYNH、B&M、B&O、C&O、NYC、PRRが購入可能で、CPとErieはまだ買えません。
任意の開いている会社に列車を1枚置きます。費用はかかりません。列車は順番に買われます。2列車が残っているなら2列車を買います。2列車が尽きた後、次に列車を買うと3列車に進みます。
会社の列車数字合計は、その会社が配当時にいくつの駅を運行できるかを表します。
列車時代ごとの会社の列車保有上限と錆びは次のように整理できます。
| 列車時代 | 会社ごとの列車保有上限 | 発生すること |
|---|---|---|
| 2列車時代 | 4両まで | 初期時代 |
| 3列車時代 | 3両まで | Greenフェーズへ進む |
| 4列車時代 | 3両まで | 2列車が錆びる |
| 5列車時代 | 3両まで | 列車保有上限はまだ3両 |
| 6列車時代 | 2両まで | 3列車が錆びる |
| 8列車時代 | 2両まで | 4列車が錆びる |
ここでいう「保有上限」は、会社が持てる列車カードの枚数です。5列車時代までは3両まで持てますが、6列車時代以降は2両までになります。
なお、プレイ動画では8列車の扱いが上記と違って見えます。動画内では、8列車は購入できるものの、既存の列車を除去して結果的に1両だけを持つ、という処理でプレイしているようです。これはボード上の「8列車時代は2両まで」という読みとは食い違います。
このページでは、ルール画像の列車時代表から読める処理を基本として説明します。動画側は、TTS上の処理、読み違い、あるいは何らかのバリアント処理の可能性がありますが、そこまでは確認できていません。
任意の開いている会社に駅を1つ置きます。これも費用はかかりません。駅が増えると、その会社の潜在的な配当力が上がります。ただし列車が足りないと、駅は収益になりません。
すべての会社について配当を計算し、全プレイヤーが保有株数に応じて現金を受け取ります。その後、税金を支払います。
会社ごとに、次の式で1株あたり配当を計算します。
運行可能駅数 = min(駅数, 列車数字合計) 1株あたり配当 = 運行可能駅数 x 現在フェーズの配当単価
たとえばB&OがBrownフェーズにいて、駅が5つ、列車数字合計が4、配当単価が10だとします。
運行可能駅数 = min(5, 4) = 4 1株あたり配当 = 4 x $10 = $40
B&O株を2枚持っているプレイヤーは、この会社から $80 を受け取ります。
配当後、現金額に応じて税金を支払います。
この税金は配当収入ではなく、配当後の現金総額にかかります。これが非常に強烈です。
ゲーム終盤では、配当を受け取って一時的にトップになると、その直後に20%税で大きく落ちることがあります。そのため、このゲームでは「単に一番儲ける」だけではなく、「配当後にどの順位の現金量になるか」を読む必要があります。
以下のいずれかでゲームは終了します。
終了時、最も現金を持っているプレイヤーが勝ちます。株の価値を最後に換金するわけではありません。
このゲームの面白そうなところは、行動自体は簡単なのに、結果がかなり絡み合うところです。
自分が株を持つ会社に駅や列車を入れると、自分だけでなく、同じ会社の株を持つ他人も儲かります。逆に、他人の会社をあえて伸ばして税金を払わせることもあります。
配当カードも単なる収入カードではありません。自分が儲かるタイミングで使うだけでなく、首位プレイヤーに20%税を払わせる、古い列車が錆びた直後に配当して相手の収入を落とす、終盤の勝敗を決める、といった使い方になります。
nullアクションがあることで、嫌なカードを出さざるを得ない場面でも、効果を実行しない選択ができます。これにより、配当カードを引いたら必ず配当が起きる、という単純なゲームではなくなっています。
一方で、かなり危ういゲームでもあります。
終盤は配当計算が重くなります。税金計算もあります。さらに、誰が最後に配当するか、誰が列車購入でゲームを終わらせるかによって勝敗が大きく動きます。
レビューやプレイ動画でも、序盤から中盤はかなり面白いが、終盤は計算量とキングメイク感が強くなる、という評価が出ています。
ただ、その荒さも含めて独特です。小さな1830というより、18xxの株、列車、配当、列車錆びを使った、かなり尖った経済テンポゲームと見るのがよさそうです。
このゲームを実際に遊ぶなら、配当計算アプリはほぼ必須だと思います。
このアプリでは、プレイヤーの現金、保有株、各会社の駅数、列車数字合計、フェーズ、配当後の税金まで管理できます。
とくに終盤は、全会社の配当を毎回手計算するとかなり大変です。アプリを使えば、ゲームの面白い部分である「どこに投資するか」「いつ配当するか」に集中できます。
1830 Cardgame は、かなり気になるゲームです。
ルールの骨格は驚くほど簡単です。カードを1枚取り、カードを1枚出すだけです。しかし、株、駅、列車、配当、税金が絡むことで、現金順位が激しく揺れます。
完成度の高い洗練された経済ゲームというより、Winsomeらしい、少ないコンポーネントで変な経済状況を作るゲームに見えます。
入手性は悪いですが、ルール構造はかなり魅力的です。少なくとも、なぜ一部の人がこのゲームを面白がっているのかは、動画とレビューを追ううちにかなり分かってきました。